ネットワーク運用は内製か外注か―情シス視点の判断基準

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ネットワーク運用の内製・外注判断が重要な理由

企業のIT基盤を支えるネットワークインフラは、日々の業務継続に直結する重要な要素です。しかし、多くの企業では情報システム部門の人員不足が深刻化しており、特に中小企業では1〜2名の少人数体制、あるいは他業務との兼務でネットワーク運用を担当しているケースが少なくありません。

このような状況下で、ネットワーク運用を内製で行うべきか、それとも外部の専門事業者に外注すべきかという判断は、企業のIT戦略において極めて重要な意味を持ちます。適切な運用体制を構築できなければ、ネットワーク障害による業務停止、セキュリティインシデントの発生、あるいは情シス担当者の過重労働といった問題に直面するリスクが高まります。

一方で、すべてを外注すればコストが膨らみ、社内にノウハウが蓄積されないという課題も生じます。重要なのは、自社の状況に応じた最適なバランスを見極めることです。本記事では、情シス負荷、コスト、リスクという3つの視点から、運用体制の選び方を体系的に整理していきます。

【編集部コメント】

近年のDX推進やクラウド移行の加速により、ネットワーク運用の複雑性は増す一方です。従来のオンプレミス中心の環境から、クラウドとオンプレミスが混在するハイブリッド環境へと移行する企業が増えており、求められる技術スキルも多様化しています。このような環境変化も、内製・外注判断を難しくしている要因の一つと言えるでしょう。

情シス負荷の観点から見る内製と外注の違い

ネットワーク運用における情シス部門の負荷は、日常的な監視業務から突発的なトラブル対応まで多岐にわたります。まずは、内製と外注それぞれの負荷特性を理解することが重要です。

内製運用における情シス負荷

内製でネットワーク運用を行う場合、情シス部門には以下のような業務負荷が発生します。24時間365日の監視体制を構築する必要があり、特に夜間・休日のオンコール対応は担当者の大きな負担となります。少人数体制では、一人の担当者に負荷が集中し、休暇取得も困難になるケースが見られます。

さらに、ネットワーク機器のファームウェアアップデート、セキュリティパッチの適用、設定変更作業といった定期メンテナンス業務も継続的に発生します。これらの作業は通常、業務時間外に実施する必要があるため、残業や休日出勤の原因となりがちです。

加えて、技術の進化に追従するための継続的な学習・スキルアップも必要です。SD-WAN、ゼロトラストネットワーク、Software-Defined Networkingなど、新しい技術やアーキテクチャが次々と登場する中で、情シス担当者は常に最新知識をキャッチアップしなければなりません。

外注運用における情シス負荷

一方、運用を外注した場合、日常的な監視やメンテナンス作業の実務は外部事業者が担当するため、情シス部門のオペレーショナルな負荷は大幅に軽減されます。夜間・休日のオンコール対応からも解放され、ワークライフバランスの改善が期待できます。

ただし、外注したからといって情シス部門の役割がなくなるわけではありません。外部事業者とのコミュニケーションやマネジメント業務が新たに発生します。具体的には、サービスレベルの定義、エスカレーション手順の策定、定期的なレビューミーティングの実施、そして障害発生時の一次対応と外部事業者への連携などです。

また、社内ユーザーからの問い合わせ窓口としての役割は引き続き情シス部門が担うケースが多く、この部分の負荷は残ります。外注事業者との契約範囲を明確にし、どこまでを外注し、どこからを内製で対応するかの線引きが重要になります。

業務内容 内製 外注
24時間監視 情シス部門が担当(高負荷) 外部事業者が担当(負荷軽減)
障害対応 すべて自社で対応 一次対応は外部、重要判断は自社
定期メンテナンス 計画・実施とも自社 実施は外部、承認は自社
技術スキル習得 継続的な学習が必須 外部の専門性を活用可能
ベンダーマネジメント 機器メーカーとの直接対応 外注事業者との調整業務

【編集部コメント】

情シス部門の負荷を考える際には、定量的な業務時間だけでなく、精神的な負担も考慮する必要があります。特にオンコール対応は、実際に呼び出される頻度が低くても、「いつ連絡が来るかわからない」という心理的プレッシャーが継続的なストレスとなります。外注によってこうした精神的負担から解放される効果は、数値では測りにくいものの、担当者のメンタルヘルスや離職防止の観点から重要な要素です。

コストの観点から見る内製と外注の比較

ネットワーク運用の内製・外注判断において、コスト面の比較は最も重要な検討事項の一つです。ただし、単純な金額比較だけでなく、見えにくいコストも含めて総合的に評価する必要があります。

内製運用のコスト構造

内製でネットワーク運用を行う場合、まず人件費が主要なコストとなります。ネットワークエンジニアの年収は専門性の高さから一般的に高水準であり、24時間対応可能な体制を構築するには複数名の採用が必要です。中途採用市場では即戦力となるネットワークエンジニアの確保は容易ではなく、採用コストも無視できません。

次に、教育・研修費用があります。技術の進化に対応するため、定期的な研修受講やベンダー認定資格の取得支援が必要です。また、監視ツールやネットワーク管理システムのライセンス費用も継続的に発生します。オープンソースツールを活用すればライセンス費用は抑えられますが、その分、カスタマイズや運用の手間が増加します。

さらに見落としがちなのが、機会損失コストです。情シス部門がネットワーク運用に時間を取られることで、本来取り組むべき戦略的なIT施策やDXプロジェクトが後回しになるケースが少なくありません。このような間接的なコストも内製運用の総コストとして考慮する必要があります。

外注運用のコスト構造

外注の場合、月額固定費または従量課金型のサービス利用料が主なコストとなります。サービス内容によって料金体系は異なりますが、一般的には監視対象機器の台数、サービスレベル(対応時間帯、応答時間など)、作業範囲によって価格が決まります。

外注のメリットは、コストの予測可能性が高い点です。月額料金が明確であるため、年間のIT予算を立てやすくなります。一方、内製の場合は人員の採用時期や離職、残業時間の変動などによってコストが変動しやすい特性があります。

ただし、外注でも初期導入費用が発生するケースがあります。現行ネットワーク構成の調査、ドキュメント整備、監視設定の初期構築などに関わる費用です。また、契約範囲外の作業が発生した場合の追加費用についても、事前に確認しておく必要があります。

コスト比較の実践的アプローチ

内製と外注のコストを比較する際は、以下のような項目を洗い出し、3〜5年程度の中期スパンで総コストを試算することが推奨されます。

コスト項目 内製 外注
人件費(年間) 500万〜800万円×人数 削減可能(最小限の人員)
採用・研修費 50万〜200万円/年 不要
監視ツール費用 100万〜300万円/年 サービス料金に含まれる
外注サービス料 不要 30万〜100万円/月
初期導入費用 体制構築コスト 50万〜300万円(初回のみ)
機会損失 戦略業務への時間不足 コア業務へ集中可能

この比較から、従業員規模や拠点数が大きい企業では外注によるスケールメリットが出やすく、小規模企業では内製の方がコスト効率が良いケースもあることがわかります。ただし、コストだけで判断するのではなく、次に述べるリスク面も併せて検討することが重要です。

リスクの観点から見る内製と外注の評価

ネットワーク運用におけるリスク管理は、事業継続性に直結する重要な要素です。内製と外注では、リスクの種類と対応方法が大きく異なります。

内製運用のリスク要因

内製運用における最大のリスクは、属人化です。特に少人数体制では、特定の担当者にネットワーク知識やノウハウが集中しがちです。その担当者が休暇中や退職した場合、運用が立ち行かなくなるリスクがあります。ドキュメント整備や知識の共有化を徹底することが重要ですが、実際には日々の業務に追われて後回しになるケースが多く見られます。

また、スキル不足による設定ミスや判断ミスのリスクも無視できません。ネットワーク機器の設定変更やトラブルシューティングには高度な専門知識が必要であり、経験の浅い担当者が対応した場合、問題を悪化させる可能性があります。

さらに、対応遅延リスクも考慮が必要です。少人数体制では、複数の障害が同時に発生した場合や、担当者が他の業務で手が離せない状況では、迅速な対応が困難になります。特に夜間・休日の障害発生時には、担当者への連絡がつかない、現場到着までに時間がかかるといった問題が生じる可能性があります。

外注運用のリスク要因

外注運用においては、ベンダー依存リスクが主要な懸念事項となります。外部事業者に運用を委託することで、社内にネットワーク運用のノウハウや経験が蓄積されず、ベンダーロックイン状態に陥る可能性があります。契約を他社に切り替える際や、将来的に内製化を検討する際に困難が生じるリスクです。

また、情報セキュリティリスクも重要です。外部事業者にネットワークへのアクセス権限を付与することで、情報漏洩のリスクが増加します。委託先の選定においては、ISMS認証(ISO27001)の取得状況、セキュリティポリシー、守秘義務契約の内容などを慎重に確認する必要があります。

さらに、コミュニケーションギャップによるリスクもあります。外部事業者は複数の顧客を抱えているため、自社のビジネス特性や業務フローを完全には理解していないケースがあります。その結果、障害対応の優先順位判断を誤る、業務影響の大きい時間帯にメンテナンスを実施してしまうといった問題が発生する可能性があります。

リスク軽減のためのハイブリッドアプローチ

内製・外注それぞれのリスクを踏まえると、両者を組み合わせたハイブリッド型の運用体制が有効な選択肢となります。具体的には、以下のような役割分担が考えられます。

  • コア業務・戦略的判断は内製で保持:ネットワーク設計、重要な設定変更の承認、セキュリティポリシーの策定など、企業の競争力に関わる部分は社内で管理
  • 定常的な監視・メンテナンスは外注:24時間監視、定期的なログチェック、パッチ適用作業など、専門性は必要だが定型化できる業務は外部委託
  • 障害対応は一次対応を外注、エスカレーション後は内製:初動対応は外部事業者が行い、重要度・緊急度が高い案件は社内担当者が判断・対応
  • 定期的なナレッジ共有の場を設定:外部事業者から月次レポートを受け取り、発生した障害や対応内容を社内で共有することで、ノウハウの蓄積を図る

このようなハイブリッド型アプローチにより、内製のメリット(ノウハウ蓄積、迅速な意思決定)と外注のメリット(専門性の活用、負荷軽減)を両立させることが可能になります。

【編集部コメント】

リスク管理において重要なのは、BCP(事業継続計画)の観点です。大規模災害や広域停電などの非常事態が発生した場合、外注事業者自身が被災して対応できなくなる可能性もあります。契約時には、外注事業者のBCP体制、バックアップ拠点の有無、災害時の対応手順などを確認し、自社のBCPと整合性を取ることが重要です。また、完全に外注に依存するのではなく、最低限の緊急対応は社内でもできるよう、基本的なスキルとドキュメントは維持しておくことが推奨されます。

自社に最適な運用体制を選択するための判断フレームワーク

ここまで、情シス負荷、コスト、リスクという3つの観点から内製と外注を比較してきました。最後に、自社の状況に応じた最適な運用体制を選択するための判断フレームワークをご提案します。

判断基準となる5つのチェックポイント

以下の5つのチェックポイントを確認することで、内製・外注・ハイブリッドのいずれが適しているかを判断できます。

1. 現在の情シス体制と技術力

現在の情シス部門の人員数、ネットワーク専門スキルを持つ担当者の有無、その他の業務との兼務状況を確認します。専任のネットワークエンジニアが複数名いる場合は内製の実現性が高く、兼務担当者が1名のみという状況では外注を検討すべきサインです。

2. ネットワーク環境の複雑性

拠点数、利用しているネットワーク機器の種類と台数、クラウドサービスとの連携状況などを評価します。拠点が多数あり、複数ベンダーの機器が混在している環境では、専門事業者の知見を活用する外注のメリットが大きくなります。

3. 求めるサービスレベル

業務特性上、どの程度の可用性が必要か、障害発生時の許容復旧時間はどの程度かを明確にします。24時間365日の高可用性が求められる場合、少人数の内製体制では対応が困難であり、外注が現実的な選択肢となります。

4. 予算の柔軟性

IT予算が固定的か、変動要因を許容できるかを確認します。内製は人件費や研修費など変動要素が多く、外注は月額固定費で予測しやすい特性があります。予算の確実性を重視する場合は外注が、柔軟に予算を調整できる場合は内製も選択肢となります。

5. 中長期的なIT戦略

今後のクラウド移行計画、拠点統廃合、M&Aなどの経営計画を考慮します。大きな変革期にある場合、まずは外注で安定運用を確保し、変革完了後に内製化を検討するというアプローチも有効です。

企業規模別の推奨アプローチ

一般的な傾向として、企業規模によって適した運用体制は以下のように整理できます。

企業規模 推奨アプローチ 理由
小規模
(従業員50名未満)
外注中心
または
マネージドサービス
専任IT担当者を置く余裕がなく、外部の専門性を活用する方がコスト効率が良い。クラウド型マネージドサービスの利用も有効。
中規模
(従業員50〜500名)
ハイブリッド型
(戦略は内製、運用は外注)
情シス部門は存在するが少人数体制のため、定常運用を外注し、コア業務に集中する体制が効率的。
大規模
(従業員500名以上)
内製中心
(一部外注も活用)
専門チームを組織できる規模であり、ノウハウ蓄積と内製化のメリットが大きい。ただし、夜間監視など特定業務は外注も検討。

ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、業種や事業特性によって最適解は異なります。たとえば、IT企業や金融機関など、ITがコアコンピタンスである業種では、規模に関わらず内製比率を高める傾向があります。一方、製造業や小売業など、ITが間接部門である業種では、外注比率を高めて本業に経営資源を集中させる判断をするケースが多く見られます。

段階的な移行アプローチの重要性

内製から外注へ、あるいは外注から内製へと運用体制を変更する際には、段階的なアプローチを取ることが成功の鍵となります。一度にすべてを切り替えるのではなく、以下のようなステップを踏むことが推奨されます。

  1. パイロット導入:まずは特定の拠点や限定された業務範囲で外注(または内製化)を試行し、効果とリスクを評価します。
  2. 引き継ぎ期間の確保:内製から外注へ移行する場合、最低でも3ヶ月程度の並走期間を設け、知識移転とプロセス整備を行います。
  3. 段階的な範囲拡大:パイロットで問題がないことを確認した上で、徐々に対象範囲を拡大していきます。
  4. 定期的な見直し:運用開始後も、四半期または半期ごとにサービスレベルやコストを評価し、必要に応じて契約内容や体制を見直します。

特に外注を開始する際には、詳細なネットワークドキュメントの整備が不可欠です。構成図、設定情報、過去の障害履歴、エスカレーション手順などを文書化し、外部事業者と共有することで、スムーズな運用開始と品質の高いサービス提供が可能になります。

外注事業者の選定ポイント

外注を決定した場合、適切な委託先の選定が極めて重要です。以下のポイントを確認することで、自社に適した事業者を選ぶことができます。

  • 技術力と実績:自社が使用しているネットワーク機器やクラウドサービスに関する知識と経験があるか、同規模・同業種での実績はあるか
  • サービスレベルの明確性:SLA(Service Level Agreement)が明確に定義されているか、達成できなかった場合のペナルティや補償はどうなっているか
  • セキュリティ体制:情報セキュリティマネジメントの認証取得状況、守秘義務契約の内容、アクセス権限管理の方法
  • コミュニケーション体制:専任の担当者は付くのか、連絡手段(電話、メール、チャットツールなど)は何が使えるか、日本語対応は可能か
  • 柔軟性と拡張性:将来的な拠点増加や機器追加に柔軟に対応できるか、契約内容の変更は容易か
  • 価格の妥当性:複数社から見積もりを取り、価格だけでなくサービス内容とのバランスで評価する

また、契約前のトライアル期間を設けることができる事業者を選ぶことも有効です。実際の対応品質やコミュニケーションの取りやすさは、契約前の情報だけでは判断しきれない部分があります。1〜3ヶ月程度のトライアル契約を結び、本格導入前に評価する機会を持つことで、ミスマッチのリスクを低減できます。

【編集部コメント】

ネットワーク運用の内製・外注判断は、一度決めたら終わりではなく、定期的に見直すべきテーマです。事業環境の変化、技術トレンドの進化、組織体制の変更などに応じて、最適な運用体制も変わっていきます。年に一度は運用体制を評価し、改善の余地がないか検討する習慣をつけることが、持続可能なIT運用につながります。また、情シス部門だけでなく、経営層や現場部門とも運用体制について対話し、組織全体でITインフラの重要性を共有することが、適切な投資判断と体制構築の基盤となります。

まとめ:自社の状況に応じた最適解を見つける

ネットワーク運用の内製・外注判断は、情シス負荷、コスト、リスクという3つの観点から総合的に評価する必要があります。それぞれの選択肢には明確なメリットとデメリットがあり、唯一絶対の正解は存在しません

内製運用は、ノウハウの蓄積迅速な意思決定ビジネス要件への柔軟な対応というメリットがある一方、24時間対応体制の構築、技術スキルの維持、属人化リスクといった課題があります。

外注運用は、専門性の高いサービス情シス部門の負荷軽減コストの予測可能性というメリットがある一方、ベンダー依存、社内ノウハウの空洞化、コミュニケーションコストといった懸念事項があります。

多くの企業にとって現実的な解は、戦略的な業務は内製で保持し、定常的な運用業務は外注するハイブリッド型です。自社の企業規模、業種特性、IT戦略、現在の情シス体制などを踏まえて、最適なバランスポイントを見つけることが重要です。

また、運用体制は一度決めたら固定ではなく、事業環境や技術トレンドの変化に応じて定期的に見直すべきものです。四半期または半期ごとにサービスレベル、コスト、担当者の負荷状況を評価し、必要に応じて体制を調整していくことで、持続可能で効率的なネットワーク運用が実現できます。

本記事が、少人数情シス部門や兼務担当者の皆様にとって、ネットワーク運用体制を検討する際の一助となれば幸いです。自社の状況を冷静に分析し、経営層や現場部門とも対話しながら、最適な運用体制を構築していきましょう。

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