ワークフローシステムのクラウド化:SaaS連携による申請・承認業務の高速化

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紙とメールによる「承認の遅延」という課題

企業における申請・承認業務は、経費精算、稟議、契約書の確認、人事異動といったあらゆる企業活動の根幹を成す重要なプロセスです。しかし、多くの企業では未だに、紙の書類を印刷し、ハンコを押すために社内を回り、あるいはメールで「承認依頼」を送信し、相手からの返信を待つという、手動かつ非効率的なワークフローが残存しています。

この紙とメールを主体としたワークフローは、「承認の遅延」という深刻な課題を生み出しています。承認者がリモートワーク中であったり、出張中であったりすると、その書類の「待ち時間」が発生し、業務全体のボトルネックとなってしまいます。特に、経理・総務部門においては、月末の経費精算や契約処理において、この遅延が業務負荷の集中法令遵守(コンプライアンス)上のリスクを引き起こしています。

この非効率な現状を打破し、申請・承認業務を劇的に高速化するためのソリューションが、ワークフローシステムのクラウド化と、それによるSaaS連携です。

本コラムでは、経理・総務部門、DX推進担当者様に向けて、クラウド型ワークフローシステムの基本的な仕組みから、SaaS連携を活用した具体的な申請・承認業務の自動化事例、そして導入を成功させるためのフロー設計のポイントを、実践的な視点から徹底的に解説します。「待ち時間ゼロ」の承認プロセスを実現するための知識としてご活用ください。

紙・メール主体のワークフローが招くコストと業務非効率

紙・メール主体の従来のワークフローが企業にもたらす具体的なコストと非効率性は以下の通りです。

1.時間コスト:
承認を得るために書類を探す、印刷する、回覧する、郵送するといった無駄な時間が発生し、従業員のコア業務時間を圧迫します。

2.ヒューマンエラー:
申請書類の入力ミス承認ルートの間違い紛失といったヒューマンエラーのリスクが高く、差し戻しによるさらなる時間ロスが発生します。

3.管理コスト:
書類の保管場所の確保(キャビネットなど)、ファイリング作業廃棄処理といった管理コストと手間が持続的に発生します。

4.リモートワークとの非互換性:
承認のために出社を余儀なくされるなど、リモートワーク多様な働き方の実現を妨げます。

ワークフローシステムのクラウド化がもたらすメリット

ワークフローシステムをクラウド化することで、企業は以下の決定的なメリットを得られます。

場所を問わない承認:
承認者はスマートフォンやPCから、場所や時間を選ばず申請内容を確認し、承認・却下操作を行えます。

承認ルートの明確化:
申請内容に応じて承認ルートが自動で設定・分岐されるため、ルート間違いがなくなります

データ連携:
SaaS連携により、申請データ(例:経費、発注額)を会計システムや人事システムに自動で同期できるため、二重入力の手間が不要になります。

本記事を読むことで得られるメリットと対象読者

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項目詳細
対象読者経理・総務部門の責任者、DX推進担当者、情報システム部門、業務改善担当者。
得られるメリット1. ワークフローのクラウド化とSaaS連携による申請・承認の高速化の具体的な事例を把握できます。
2. 経費精算入社時申請など、部門横断型の自動化ワークフローの設計例を学べます。
3. SSO連携柔軟なフォーム作成といった、ワークフローシステム選定の重要ポイントを習得できます。

クラウド型ワークフローシステムの仕組みとSaaS連携の基礎

ワークフローシステムのクラウド化は、申請書のデジタル化承認プロセスの自動制御によって実現されます。

クラウド型ワークフローシステムとは?従来のオンプレミス型との違い

オンプレミス型:
サーバーを自社内に設置し、システムを構築・運用するため、高額な初期投資メンテナンス負荷が継続的に発生します。

クラウド型:
サービス提供事業者のクラウド上でシステムが稼働するため、初期費用が抑えられWebブラウザからどこでもアクセス可能です。メンテナンスやアップデートはベンダー側が行うため、企業の運用負荷が軽減されます。

クラウド型は、特にリモートワーク多拠点展開している企業にとって、場所を選ばない承認を実現するための必須インフラです。

SaaS連携の役割:ワークフローと人事・会計システムをつなぐ

ワークフローシステムを単体で利用しても、申請データはシステム内に留まり、最終的に人事システム会計システムへの手動入力が必要となります。
ここでSaaS連携が重要な役割を果たします。
この連携により、データの二重入力が解消され、経理・総務部門の負荷が大幅に削減されます

API連携:
ワークフローシステムが持つAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じて、会計SaaSや人事SaaSと安全に接続します。

データ同期:
承認が完了した申請データ(例:承認済みの経費額)を、自動的かつリアルタイムで連携先のシステムに転記します。

申請・承認業務を高速化するモバイル対応の仕組み

クラウド型ワークフローシステムは、モバイルアプリレスポンシブデザインのWebインターフェースを通じて、承認・申請を高速化します。

プッシュ通知:
承認者に対して「〇〇さんの稟議が届きました」という通知がスマートフォンに即座に届き、承認依頼の見落としを防ぎます

モバイル承認:
承認者は、電車内や出張先からでも、申請内容をプレビューし、ワンタップで承認・却下の操作を完了できます。これにより、承認待ちによる業務の滞留が解消されます。


【高速化】SaaS連携で実現するワークフロー自動化事例

ワークフローシステムと他のSaaSを連携させることで、企業の主要なバックオフィス業務は大幅に高速化されます。

事例1:人事SaaSとの連携による「入社時申請」の自動化

連携対象:
ワークフローシステム 人事SaaS

課題:
新入社員が入社する際、IT機器の貸与、アクセス権の付与、備品の申請など、複数の申請書複雑な承認ルートを経る必要があり、入社後の業務開始までに時間がかかっていた。

自動化ワークフロー:
・人事SaaSに新入社員情報が登録されたことをトリガーとします。
・ワークフローシステムが自動で「入社時申請フォーム」を作成し、総務・情報システム部門に自動で承認依頼を送信します。
・各部門の承認が完了すると、その結果が人事SaaSに自動で反映されます。

効果:
業務開始までのリードタイムが短縮され、人事担当者の手動での申請書作成・管理工数がゼロになります。

事例2:会計SaaSとの連携による「経費精算」の全自動化

連携対象:
ワークフローシステム 会計SaaS

課題:
経費精算の承認が完了した後も、経理担当者が会計システムに仕訳データを手動で二重入力する必要があり、月末の負荷が非常に高かった。

自動化ワークフロー:
・従業員が経費精算SaaSで申請を行い、ワークフローシステムで上長承認を受けます。
・最終承認が完了したことをトリガーに、iPaaSなどの連携ツールが仕訳データを自動生成します。
・生成された仕訳データを、会計SaaSのAPIを通じて自動で登録します。

●効果:
経理部門の仕訳入力工数が完全に不要となり、ヒューマンエラーのリスクがゼロになります。また、経費の月次締め処理が早期化されます。

事例3:電子契約SaaSとの連携による「契約承認」の即時実行

●連携対象:
ワークフローシステム $\to$ 電子契約SaaS

課題:
契約書のドラフト作成後、社内での法務チェックや役員承認に時間がかかり、契約締結までのリードタイムが長くなり、ビジネスチャンスを逸失するリスクがあった。

自動化ワークフロー:
・営業部門がワークフローシステムで契約内容の最終稟議を申請し、法務部門、役員からの承認を受けます。
・全承認が完了したことをトリガーに、電子契約SaaSに契約書データが自動転送され、相手方への署名依頼が即時送信されます。

●効果:
複雑な契約承認プロセスが数時間〜1日以内に完了し、ビジネスの実行スピードが大幅に向上します。また、契約の監査証跡がすべてデジタルで残り、コンプライアンスも強化されます。


ワークフロー導入ガイド:申請・承認フロー設計のポイント

ワークフローシステムは、システムを導入するだけでなく、非効率なプロセスそのものを見直すことが最も重要です。

ポイント1:承認フローの可視化とムダなプロセスの徹底排除

現状の可視化:
まず、現在の紙ベースまたはメールベースの申請が、誰から誰へ、どのようなルートをたどっているかを、フローチャートなどで詳細に可視化します。

ムダの排除:
「慣習で回覧しているだけの承認者」「形式的なチェックしかしていない部署」など、ボトルネックとなっているムダなプロセスや承認者を特定し、デジタル化を機にルートから排除します。

適切な条件分岐:
承認ルートを「金額」や「申請内容」に応じて細かく分岐させ、必要な承認者だけに書類が回るように設計します。

ポイント2:申請書類のデジタル化と入力フォームの最適化

入力フォームの統一:
部署ごとにバラバラだった申請書を、クラウドシステム上で統一されたデジタルフォームに移行します。

必須入力項目の設定:
入力漏れ記入ミスを防ぐために、必須項目、選択式項目、数値入力制限などを設定し、データの入力品質を高めます。

参照機能の活用:
申請者が過去の履歴や関連情報(例:予算残高)をフォームから参照できる機能を追加することで、申請書の作成負荷を軽減します。

ポイント3:差し戻し・条件分岐設定によるスムーズな承認ルート確保

承認プロセスにおいて「差し戻し」は時間のロスにつながるため、これを最小限に抑える仕組みが必要です。

差し戻し理由の明確化:
差し戻しを行う際、理由を定型文で選択できるようにし、申請者が迅速に修正できるようにします。

承認ルートの動的な変更:
承認者が不在の場合、代理承認者への自動転送、あるいは承認期限切れによる自動上位者転送など、プロセスが滞らないための動的な分岐を設定します。

通知の最適化:
承認者に、承認依頼が届いたことをメール、チャット、モバイルアプリへのプッシュ通知など、複数のチャネルで通知することで、承認依頼の見落としをなくします


選定の重要ポイント:機能・セキュリティ・費用対効果

クラウド型ワークフローシステムを選定する際は、SaaS連携を前提とした機能とセキュリティを重視すべきです。

機能比較:柔軟なフォーム作成と高度な条件分岐機能

フォームの柔軟性:
経費精算、稟議、人事申請など、多様な申請内容に対応できるカスタマイズ性の高いフォーム作成機能があるか。

条件分岐の高度さ:
「〇〇部門の申請かつ50万円以上の場合、A部長とB役員の両方の承認を必須とする」といった、複雑な承認ルートを柔軟に設定できる機能があるか。

モバイル対応:
スマートフォンやタブレットから、申請フォームの入力と承認操作がストレスなく行えるか。

セキュリティ統合:SSOによる認証強化と監査証跡の確保

ワークフローシステムは機密情報(財務、人事)を扱うため、セキュリティは最優先です。

SSO(シングルサインオン)連携:
従業員がSSO基盤(IDaaSなど)を通じてログインできるかを確認し、認証の一元化とセキュリティの強化を実現します。

アクセス権限の厳格化:
申請内容承認ステップに応じて、閲覧・編集できるデータを細かく制御できるロールベースのアクセス制御(RBAC)機能があるか。

監査証跡(ログ):
誰が、いつ、何を申請し、誰が承認したかというすべての操作ログが改ざん不能な形で記録・保存され、監査に利用できるかを確認します。

導入・運用コストの評価:ライセンス体系とカスタマイズの必要性

●ライセンス体系:
「利用ユーザー数」または「機能別」の月額課金体系を比較し、自社の従業員数や利用頻度に対して最もコスト効率が良いプランを選びます。

カスタマイズの必要性:
既存の複雑なワークフローを再現するために、カスタマイズ開発が必要か、それとも標準機能の設定で対応可能かを見極めます。カスタマイズが必要な場合、開発コストと保守費用が大幅に増加します。

連携コスト:
SaaS連携に必要なAPI利用料iPaaS(連携ツール)の月額費用を、ワークフローシステムの料金と合わせてトータルコストで評価します。


まとめ:組織のスピードを高めるデジタル承認

本コラムでは、ワークフローシステムのクラウド化とSaaS連携が、企業の申請・承認業務を高速化し、経理・総務部門の負担を劇的に軽減することを、具体的な事例とともに解説しました。

モバイル対応SaaS連携により、紙やメールベースのプロセスが排除され、承認ルートがデジタル上で自動制御されることで、企業は「承認待ち」によるボトルネックから解放されます。
ワークフローシステムのクラウド化がもたらす主要な成果は以下の通りです。

  • 業務高速化: 承認をモバイルで完結させ、承認までのリードタイムを最小化
  • データ品質の向上: SaaS連携により、データ入力の二重手間とヒューマンエラーを排除
  • コンプライアンス: すべての申請・承認履歴をデジタルで記録し、監査証跡を確保。

編集部のコメント

経理・総務部門および経営層の皆様へ。ワークフローシステムの導入は、単なるペーパーレス化ではありません。それは、企業内の意思決定プロセス全体を高速化し、組織のスピード(アジリティ)を高めるための戦略的なDX投資です。

紙やメールを捨て、SaaS連携を最大限に活用することで、「待ち時間ゼロ」の承認文化を構築してください。本記事の導入事例設計ポイントを参考に、貴社の申請・承認業務を、企業の成長を加速させるエンジンへと変革されることを推奨いたします。

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編集チーム

BtoB企業のマーケティング&セールス支援を担当しているBBマーケティングが運営しています。
コラムや用語集は生成AIを活用しながら編集チームによる監修の上で掲載をしています。
法人の通信・ネットワークサービスのマーケティング支援で学んだ事や活用できる情報を掲載していきます。
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