中小企業・学校におけるネットワーク構成の基本設計

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なぜネットワーク構成図が重要なのか

中小企業や学校において、社内ネットワークの設計は業務やカリキュラムの基盤となる重要な要素です。しかし、IT専任の担当者がいない組織では、「どこから手をつければよいのか分からない」「機器の役割が理解できない」といった悩みを抱えるケースが少なくありません。

ネットワーク構成図を作成することには、複数のメリットがあります。まず、現在のネットワーク環境を可視化できることで、トラブル発生時の原因特定が迅速に行えます。また、新しい機器を追加する際や、セキュリティ対策を強化する際にも、全体像を把握していることで適切な判断が可能になります。

特に教育機関では、児童・生徒が利用するネットワークと教職員が利用するネットワークを分離する必要があるケースも多く、学校ネットワーク構成を事前に設計しておくことが不可欠です。適切な設計がなされていないと、セキュリティリスクが高まるだけでなく、通信速度の低下や頻繁な接続障害といった問題も発生しやすくなります。

【編集部コメント】
ネットワーク構成図は「作って終わり」ではありません。機器の追加や変更があるたびに更新し、常に最新の状態を保つことで、真に価値のある資料となります。

ネットワークを構成する主要機器の役割

社内ネットワークを構築する上で、最低限理解しておくべき機器はルータースイッチアクセスポイントの3つです。それぞれの役割を正確に理解することが、適切なネットワーク構成図を作成する第一歩となります。

ルーターの役割

ルーターは、インターネットと社内ネットワークを接続する「玄関口」の役割を果たします。プロバイダーから提供される回線(光回線やADSLなど)を受け取り、社内の複数の機器がインターネットにアクセスできるようにする機能を持っています。

また、ルーターにはNAT(ネットワークアドレス変換)機能があり、グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスを相互変換することで、限られたIPアドレスで多数の機器を接続可能にします。さらに、ファイアウォール機能を備えているモデルも多く、外部からの不正アクセスを防ぐ第一の防御壁としても機能します。

スイッチの役割

スイッチ(スイッチングハブ)は、社内ネットワーク内で複数の機器を相互接続するための機器です。パソコン、プリンター、サーバーなど、有線LANで接続する機器をスイッチに集約することで、効率的なデータ通信が可能になります。

単純なハブとは異なり、スイッチはMACアドレスを学習し、送信先に必要なポートにのみデータを転送します。これにより、ネットワーク全体のトラフィックを削減し、通信速度の向上とセキュリティの強化を実現します。企業や学校で複数のフロアや部屋にネットワークを展開する場合、各所にスイッチを配置する構成が一般的です。

アクセスポイントの役割

アクセスポイント(無線LANアクセスポイント、AP)は、Wi-Fi接続を提供するための機器です。有線LANに接続されたアクセスポイントが電波を発信することで、スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどの無線機器がネットワークに参加できるようになります。

特に教育現場では、1人1台端末の環境整備に伴い、多数の端末を同時接続できる高性能なアクセスポイントが必要とされています。適切な配置と設定を行わないと、電波干渉接続台数の上限によって通信が不安定になるため、学校ネットワーク構成においては慎重な設計が求められます。

機器名 主な役割 配置場所
ルーター インターネット接続・NAT・ファイアウォール 回線終端装置の直後
スイッチ 有線LAN機器の相互接続・トラフィック制御 各フロア・各部屋
アクセスポイント 無線LAN(Wi-Fi)の提供 電波が届く範囲に複数配置

失敗しない基本的なネットワーク構成例

ここでは、中小企業や学校で実際に導入しやすい、失敗しにくいネットワーク構成の具体例を紹介します。規模や要件に応じて調整が必要ですが、基本的な考え方は共通しています。

小規模オフィス(従業員20名程度)の構成例

従業員が20名程度の小規模オフィスでは、シンプルな構成でも十分に機能します。基本的な流れは以下の通りです。

  1. インターネット回線(光回線など)からONU(回線終端装置)に接続
  2. ONUからルーターに接続し、社内ネットワークとインターネットを中継
  3. ルーターからL2スイッチ(レイヤー2スイッチ)に接続し、有線LAN機器を集約
  4. スイッチからアクセスポイントを接続し、Wi-Fi環境を提供
  5. 各デスクのパソコンやプリンターをスイッチまたはアクセスポイントに接続

この構成では、ルーターにDHCP機能を持たせることで、各機器に自動的にIPアドレスを割り当てることができます。また、ルーターのファイアウォール機能により、基本的なセキュリティも確保されます。

【編集部コメント】
小規模オフィスでは、家庭用ルーターではなく、業務用ルーターの導入をお勧めします。同時接続台数の上限が高く、VPN機能などビジネスに必要な機能を備えているためです。

中規模オフィス(従業員50〜100名程度)の構成例

従業員数が増えると、ネットワークトラフィックも増加するため、より堅牢な構成が必要になります。中規模オフィスでは、以下のような構成が推奨されます。

  1. インターネット回線からルーターに接続(ファイアウォール・UTM機能付きが望ましい)
  2. ルーターからコアスイッチ(基幹スイッチ)に接続
  3. コアスイッチから各フロアのエッジスイッチ(フロアスイッチ)に接続
  4. 各エッジスイッチから端末やアクセスポイントに接続
  5. サーバーやNASなどの共有リソースはコアスイッチに直接接続

この構成では、階層型ネットワークを採用することで、トラフィックの集中を分散し、障害発生時の影響範囲を限定できます。また、コアスイッチにVLAN機能を持たせることで、部署ごとにネットワークを論理的に分離し、セキュリティと管理性を向上させることも可能です。

学校ネットワークの構成例

学校においては、教職員用と児童・生徒用のネットワークを分離することが重要です。また、1人1台端末環境では、数百台から千台以上の端末が同時接続される可能性があるため、学校ネットワーク構成は特に慎重な設計が求められます。

  1. インターネット回線からファイアウォールまたはUTMに接続
  2. ファイアウォールからコアスイッチに接続
  3. コアスイッチでVLANを設定し、教職員用・児童生徒用を分離
  4. 各教室・職員室にエッジスイッチアクセスポイントを配置
  5. 教室には高密度対応の業務用アクセスポイントを設置(1教室1台が目安)
  6. フィルタリングサーバーやプロキシサーバーを設置し、有害サイトをブロック

学校では、認証機能を持つアクセスポイントを使用し、利用者ごとにアクセス権限を管理することも推奨されます。また、GIGAスクール構想に対応したネットワーク設計では、クラウドサービスへの安定したアクセスを確保するため、十分な帯域幅の確保も重要です。

規模 推奨構成 重要ポイント
小規模(〜20名) ルーター → スイッチ → AP・端末 シンプルさと管理のしやすさ
中規模(50〜100名) ルーター → コアスイッチ → エッジスイッチ → 端末 階層化とVLANによる分離
学校(数百名〜) FW/UTM → コアスイッチ(VLAN) → 各教室スイッチ・AP 教職員・児童生徒の分離とフィルタリング

ネットワーク構成図の作成手順とポイント

実際にネットワーク構成図を作成する際には、以下の手順で進めると効率的です。専門的な知識がなくても、基本的な流れを理解していれば作成可能です。

ステップ1:現状把握と要件整理

まず、現在使用している機器をリストアップします。ルーター、スイッチ、アクセスポイント、サーバー、パソコン、プリンターなど、ネットワークに接続されているすべての機器を洗い出します。それぞれの型番IPアドレス接続ポート番号などの情報も記録しておくと、後の管理が容易になります。

次に、ネットワークに求める要件を整理します。「無線LANのカバー範囲を拡大したい」「外部からのリモートアクセスを可能にしたい」「部署ごとにネットワークを分離したい」など、具体的なニーズを明確にすることで、適切な構成を選択できます。

ステップ2:構成図の作成

構成図は、専用のツールを使用しなくても、PowerPointGoogleスライドDraw.io(無料のオンライン作図ツール)などで作成できます。以下の要素を図に含めることが推奨されます。

  • インターネット回線とプロバイダー情報
  • ONU(回線終端装置)
  • ルーター(型番、IPアドレス)
  • スイッチ(各階層のスイッチ、型番、ポート数)
  • アクセスポイント(設置場所、SSID)
  • サーバー・NAS(役割、IPアドレス)
  • 端末(台数、種類)
  • 接続関係(どの機器がどの機器と接続されているか)

図は上から下、または左から右に情報の流れを表現すると理解しやすくなります。インターネットを頂点に、ルーター、スイッチ、端末という階層構造を意識して配置しましょう。

ステップ3:IPアドレス設計

社内ネットワークでは、プライベートIPアドレスを使用します。一般的には以下の範囲が使用されます。

  • クラスA: 10.0.0.0 〜 10.255.255.255
  • クラスB: 172.16.0.0 〜 172.31.255.255
  • クラスC: 192.168.0.0 〜 192.168.255.255

小規模オフィスでは、192.168.1.0/24(192.168.1.1〜192.168.1.254)のような設定が一般的です。中規模以上では、部署やフロアごとに異なるサブネットを割り当てることで、管理がしやすくなります。

また、サーバーやネットワーク機器には固定IPアドレスを割り当て、パソコンやスマートフォンなどの端末にはDHCPによる自動割り当てを使用するのが一般的です。固定IPの範囲とDHCPの範囲を明確に分けることで、IPアドレスの競合を防ぐことができます。

【編集部コメント】
IPアドレス設計は、後から変更すると全機器の設定変更が必要になり大変です。初期段階で将来の拡張も見越した設計を行うことが重要です。例えば、現在20台でも、将来50台に増える可能性があるなら、/24(254台分)のサブネットを確保しておくとよいでしょう。

ステップ4:セキュリティ要件の検討

ネットワーク構成図を作成する際には、セキュリティ対策も同時に検討する必要があります。以下の項目は最低限確認しておくべきポイントです。

  • ファイアウォール設定:外部からの不正アクセスを防ぐルールの設定
  • Wi-Fiの暗号化:WPA3またはWPA2による暗号化(WEPは使用しない)
  • SSIDの設計:来客用・従業員用など、用途別に分離
  • VLAN分離:部署間やゲストネットワークの分離
  • アクセス制御:MACアドレスフィルタリングや認証機能の活用
  • 定期的なファームウェア更新:ルーターやスイッチの脆弱性対策

特に学校や医療機関など、個人情報を扱う組織では、セグメント分離を徹底し、重要な情報を扱うネットワークと一般利用のネットワークを物理的または論理的に分けることが推奨されます。

運用・保守で気をつけるべきポイント

ネットワーク構成図を作成し、実際にネットワークを構築した後は、適切な運用・保守が不可欠です。IT専任担当者がいない組織でも、以下のポイントを押さえておくことで、安定したネットワーク環境を維持できます。

定期的な構成図の更新

ネットワーク構成図は、「生きた資料」として維持する必要があります。新しい機器を追加したり、設定を変更したりする際には、必ず構成図も更新しましょう。更新を怠ると、トラブル発生時に正確な情報が得られず、復旧に時間がかかる原因となります。

構成図は、紙の資料だけでなく、電子ファイルとして保管し、関係者がいつでもアクセスできる場所に保存しておくことが推奨されます。また、バージョン管理を行い、いつ・誰が・何を変更したのかを記録しておくと、問題発生時の原因究明に役立ちます。

バックアップと冗長化

ネットワーク機器の故障は予期せず発生します。特に重要な機器については、予備機を用意しておくか、冗長構成(同じ機能を持つ機器を複数配置)を検討しましょう。インターネット回線についても、可能であれば異なるプロバイダーの回線を2本用意するデュアルホーム構成を採用することで、万が一の際の事業継続性が向上します。

また、ルーターやスイッチの設定情報のバックアップも定期的に取得しておくことが重要です。機器が故障して交換が必要になった際、バックアップがあれば迅速に復旧できます。

ログの監視とトラブル対応

ネットワーク機器は、接続状況や異常の発生をログとして記録しています。定期的にログを確認することで、異常な通信パターンや機器の劣化兆候を早期に発見できます。特に、以下のような事象は注意が必要です。

  • 繰り返し発生する接続エラー
  • 特定の時間帯に集中する通信遅延
  • 不明な機器からのアクセス試行
  • ファイアウォールによる大量のブロック記録

トラブル発生時には、ネットワーク構成図を参照しながら、どの部分で問題が発生しているかを切り分けます。インターネットに接続できない場合、まずルーターの状態を確認し、次にスイッチ、最後に端末という順で確認していくと効率的です。

外部専門家との連携

IT専任担当者がいない組織では、すべてのトラブルを自力で解決するのは困難です。信頼できるITベンダーシステムインテグレーターと保守契約を結び、困ったときにすぐに相談できる体制を整えておくことが重要です。

その際、正確なネットワーク構成図があれば、外部専門家も現状を迅速に把握でき、適切なアドバイスや対応が可能になります。構成図は、外部に支援を依頼する際の「共通言語」としても機能するのです。

【編集部コメント】
年に一度は、外部の専門家にネットワーク全体の健全性診断を依頼することをお勧めします。セキュリティの脆弱性や非効率な設定を発見し、改善することで、長期的に安定したネットワーク環境を維持できます。

将来を見据えた拡張計画

組織の成長に伴い、ネットワークも拡張していく必要があります。初期段階から拡張性を考慮した設計を行うことで、後からの変更コストを抑えることができます。具体的には、以下のような点に注意しましょう。

  • スイッチのポート数に余裕を持たせる(使用率70%程度を目安に)
  • IPアドレスの範囲は、現在の必要数の2倍以上を確保
  • アクセスポイントは将来的な増設を考慮した配置
  • コアスイッチは高性能なモデルを選択し、エッジスイッチで調整
  • 配線経路は将来のケーブル追加を考慮して余裕を持たせる

これらのポイントを押さえた社内ネットワーク設計を行うことで、組織の成長に柔軟に対応できるネットワーク基盤を構築できます。

まとめ

中小企業や学校において、適切なネットワーク構成図を作成し、基本的な設計原則に基づいてネットワークを構築することは、業務効率化とセキュリティ確保の両面で非常に重要です。

ルーター・スイッチ・アクセスポイントという主要3機器の役割を正確に理解し、組織の規模や用途に応じた適切な構成を選択することで、IT専任担当者がいない環境でも安定したネットワーク環境を実現できます。

本記事で紹介した基本的な構成例を参考に、まずは現状のネットワーク環境を可視化する構成図の作成から始めてみてください。構成図があることで、トラブル対応が迅速化するだけでなく、将来的な拡張計画も立てやすくなります。

また、社内ネットワーク設計は一度作って終わりではなく、組織の成長や技術の進化に合わせて継続的に見直していくことが大切です。定期的なメンテナンスと、必要に応じた外部専門家との連携により、長期的に安定したネットワーク環境を維持していきましょう。

特に学校ネットワーク構成においては、児童・生徒の安全なインターネット利用を支える基盤として、セキュリティと拡張性を両立した設計が求められます。本記事の内容を参考に、それぞれの組織に最適なネットワーク環境を構築していただければ幸いです。

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